Trance Shift 8 - Notes

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加算平均合成で天体写真のノイズと雲対策

今週末は赤城に天体撮影に行ってきました。先週テストしたSEL1670Zをメインとして持参しましたが、当日は高層域に雲が多く、星天観察こそできるものの、撮影には不向き。写真も良い写真は4枚程度しか…

なので、今回は最近お熱のコンポジット(加算平均)について書いてみますよ。

NR(ノイズリダクション)

近年のデジタルカメラでは高感度撮影をすると自動的にカメラがダークフレーム除算によるNR(ノイズリダクション)をしてくれます。バルブ撮影とかやってみた人は目にしたことが多いと思いますが、俗に「おしおきタイム」といわれる奴で、30秒の撮影をするとその後30秒間カメラが使えなくなるというやつですね。これ原理は簡単で、写真を撮った直後に同じ感度、同じ露出時間(更にいうと同じ気温・湿度・高度・etc...になりますね)で真っ黒な写真(ダークフレーム)を撮影することにより「ノイズだけ」の写真を作りだし、それを元の写真のデータから「減算」することでノイズを少なくしよう!というやつ。

例えば、ある画素の写真に Red=80 (RGBのうちのR) という値が記録されて、ダークフレームには Red=2 が記録されていれば、NR後の写真は Red=78 (80-2)と記録していく感じですね。この辺は画像の処理エンジンによって異なると思うのでこの通りではないと思いますが、原理は似たようなものだと思います。

ただあまりに長時間露出になったりすると効果が薄かったり、そもそも高感度に強い最近のカメラでは使わない人も多く、私の場合も天体撮影する場合はOFFにしていることが多いです。おしおきタイムはやっぱり辛いです。30分連続撮影して30分カメラが使えない、とかだとやっぱりつらいですからね。

で、ダークフレーム減算の代わりに使われるNRが加算平均でして、最近のカメラの「マルチショットNR」とかいう名前がついてるのはこれにあたります。こちらは名前通り、何枚か同じ写真を撮影してその平均値を取る方法です。ダークフレーム除算という方法があるように、同じような撮影条件では同じようなノイズにはなるものの、必ず一致することは極めて少なく本来の絵に加えてノイズはある程度のランダム性がでます。

例えば Red=80, Red=68, Red=81, Red=79 の4枚が画像だとすれば、Red=77 が平均値となりますのでそれを採用するというのが基本原理です。このあたりもカメラのセンサーに記録する部分はやはり各社の画像エンジンによって細かいアルゴリズムは違うと思いますが、今回のように手動で画像処理を行う場合はこの基本原理をそのまま利用しちゃいます。

ちなみに数字はあくまで例なので、14bit演算だっともっとこまけーだろ!減算って単なる引き算じゃねーんだよ!!みたいなのはあんまり考えないでください。(むしろこの辺のアルゴリズムは私が詳しく知りたいぐらい)

加算平均合成でノイズと雲対策

さて、話を元に。

この日は雲予報から推測して赤城山の雲が少なくなるであろうAM1:00前後を狙いました。そして、雲が流れる合間を縫って5枚連続撮影してみて、後から合成したのがこれ。

30秒露光を5回繰り返すことで、同じ絵が5枚撮れるんですけど、微妙に雲の位置は変化していきます。で、これに本来はNRに利用する加算平均を使うんですね。そうすると、雲が1枚だけに写っている領域があったとしたら雲の彩度は1/5になります。つまり、薄い雲ならほとんど目立たなくなります。それでも気に入らないという場合は雲ごとレタッチで削除してから合成するという手もあるんですが、そこまでやるのはちょっとって感じではありますね。

ただ、この方法は絵の位置があっていてこそできるものです。今回は赤道儀を使って撮影しているので星の位置は5枚ともずれていませんが、電柱の位置が変わっていますので電柱がブレいるように移ります。赤道儀がなければ星が動いて背景が変わらないので綺麗に絵を仕上げたければ絵を移動して中央をトリミングする形になるでしょうかね。

合成には加算平均の他にも明るい部分だけを合成する比較明合成という手法もあります。興味があればぜひ。

セルフタイマーを使って気軽にコンポジット素材作り

NEX-7では10秒後に5枚連続撮影するセルフタイマーがあるのでこれを使うととってもラクです。どのカメラもそうなんですが、30secを超える露出時間は通常指定できなくて、30secを超えてしまう場合はリモコンを利用したバルブ撮影が基本です。でも、自分で時間図るのとかめんどくさいですよね。Canonの一眼レフみたいにタイマー付きのリモコンがあれば簡単なのですが…

NEX-7でもISO1600ともなるとかなりのノイズが発生してしまうので、本気で絵を狙う場合は3枚ないしできれば5枚コンポジットするのが良さそうと思ってます。このへんは背景をどうするかとの兼ね合いもありますが、概ね3枚もコンポジットしてやれば十分かなという気はしてます。この場合も手元にリモコン等がなくても10秒後に3枚連続撮影っていうセルフタイマーがあるのでそれが利用できますね。(3枚か5枚かはオプションで変更できます)

10枚もの合成をしてみた結果もあるんですが、背景が長すぎてあんまり使えません。これはISO800にして露出時間を倍にして5枚コンポジットしても同じ結果ですが、赤道儀による移動量が多すぎて背景が意味を無さなくなってしまうんですね。勿論背景は所詮背景を割り切るのであれば大いに使える方法だと思います。